2010/06/30

shiOn

パチパチパチ


遠くから聞こえる音


辺りの灰で広がる乾いたセカイを潤していく


キオクの階段を踏み外し、繰り返し堕ちていく快楽


薄暗い部屋には机が一つ扉が二つ、屋根はない




止まらない欲望の雫 


眠りかけの脳内を刺激して歪んだ愛情を狂わせる


書きかけの日記、最後の最後のページが滲んだままで


今日も存在を否定して安心する




冷たくて痛々しい音が眼に沁みる


シクシクシク



傷だらけの裸足のままで


悲しみでも怒りでもない誤解に塗れた嬉し涙


ゆっくりと時計の針を戻したり重ねたり


扉を開けた先に流れ込む絶望の波に揺られて




過去の表情は忘却の果てに


崖から身を投げた事は心に刻まれて


枝分かれした雫の跡を進み進んで振り返り


崩壊したキオクの残像を拾い集めていく




絡み合う言葉に音はなく気紛れに踊る


ズキズキズキ



脳内に咲く花に実はならず


指差し気付かぬ程に日記を読み続けて途方に暮れる


偽りの衣に固められた幸福は浄化され見つめ直す


流線に広がる運命の糸なんて始めから切裂かれているのに




懺悔のふりをして流す涙


胸の奥で響く痛みが次第に心地良い旋律に変わる


見上げると雫は泡に包まれ空へと還っていく


計算通りの道筋に落とし穴を並べて嘲笑いながら




外から誰かがもう一つの扉に触れる


ガチャガチャガチャ



耳障りな音が部屋を飲み込む


微かに聞こえる呼び声に耳を傾けず眼を閉じる


景色が回り傾き切り替わり崩れ去るスクリーンの前に座る


脈絡のないストーリー、歓びも悲しみも伝えない



何れだけの時が経ったのか


眼を覆いたくなる残酷な瞬間、書き換えられたシナリオ


枯れたはずの涙に濡れたままで、呼吸止めてココロ揺らす


気付かぬ間に眠ってしまった周りの席から拍手喝采



目が覚めた先に終わらぬ夢のセカイ


ピタピタピタ



遠くから聞こえる音


ここには机も扉もないただただ何もない空間


存在の意味のない音だけが響き渡りキオクを導いていく


前に進もうとしても方向が存在しないまま



突然目の前に扉が一つ


失っていたはずの歓びの花が咲き、扉に手を掛けるが開かない


扉のサキにいるであろう誰かに呼びかけるが静寂のまま


振り返るともう一つの扉、その前立つ涙に濡れた誰かが問う





それは何の雫ですか